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9年ぶりにプリンター複合機を買い換えました。キヤノンのXK130 (amazon)。これまで6色インクでしたが、5色インクになったこともあってインク代が8000円近くから3000円代へと半分以下になりました。印刷品質もかなり良くなって、9年間の進化を感じてます。下記の「満ち足りた家族」の画像はこの複合機でスキャンしたパンフレットの表紙です。
垣根涼介の原作を入江悠監督が映画化したアクション時代劇。室町時代中期を舞台に徳政一揆(土一揆)を主導した蓮田兵衛(大泉洋)の戦いを描いています。展開に違和感があったので原作の新潮文庫版の上巻を途中まで読みました。原作の主人公は蓮田兵衛ではなく、才蔵(長尾謙杜)です。映画で才蔵の修行シーンが延々と描かれたり、クライマックス、二条城前でのアクションシーン(ここが一番良いです)で活躍するのが才蔵なのはそのためでしょう。
監督・脚本は「ビジランテ」(2017年)、「あんのこと」(2024年)などの入江悠。アクション場面や当時の飢饉と疫病に苦しむ庶民の表現など画面づくりは良いのですが、脚本に難があります。一揆側に蓮田、才蔵以外にキャラの立った人物がいず、物語としての膨らみに欠けますし、エモーションも盛り上がっていきません。1人ではなく、複数で脚本化した方が良かったと思います。
かつての仲間でありながら蓮田兵衛と対立していく骨皮道賢役の堤真一と、高級娼婦・芳王子(ほおうじ)役の松本若菜は良いです。才蔵に修行させる唐崎の老人役の柄本明はずーっと叫んだセリフ回しがうるさく感じられ、こういうセリフ回しだと、武術の達人には見えませんね。
音楽がマカロニウエスタン風なのは入江監督の趣味だとか。マカロニウエスタン以外に黒澤明「用心棒」も意識したそうですが、映画史に残る傑作「用心棒」の域にはとても達していません。こういうジャンルは好きなだけに残念です。
▼観客10人ぐらい(公開初日の午前)2時間15分。
パンフレットの表紙
自分の子供たちが一緒に起こした凄惨な事件に苦悩する兄弟を描くホ・ジノ監督作品。ヘルマン・コッホ原作「冷たい晩餐」の4度目の映画化だそうです。オランダ、イタリア、アメリカで映画化されていて、アメリカ版は「冷たい晩餐」(2017年、オーレン・ムーヴァーマン監督)ですが、評価は最低なので見る必要はないでしょう。イタリア版「われらの子供たち」(2014年、イヴァーノ・デ・マッテオ監督)は日本ではソフト化されていないようです。
「八月のクリスマス」(1998年)、「四月の雪」(2005年)のホ・ジノ監督だけに緊密な作りですが、物語の先行きはこうなるだろうと予想はつきます。そこを少し裏切り、ショッキングな結末となるのは原作通りなのか映画の工夫なのか分かりません(原作絶版です。amazonでテンバイヤーが売ってます)。
弁護士の兄を演じるのはソル・ギョング、医師の弟はチャン・ドンゴン。それぞれの妻をクローディア・キムとキム・ヒエが演じています。子供たちの犯行の様子は防犯カメラに映っていて、映像が不鮮明だったために親だけに分かったという設定。自首させるか、隠し通すか親たちは悩むことになります。親に分かるなら友人知人近所のおばさんたちにも分かるんじゃないか、と思ってしまいます。
IMDb7.2、ロッテントマト100%(アメリカでは映画祭で上映のみ)。
▼観客3人(公開初日の午後)1時間49分。
川沿いにあるベンチを舞台に4つの物語(5エピソード)で構成するオムニバス映画。映像監督・写真家の奥山由之による自主制作作品で、脚本を生方美久、蓮見翔、根本宗子、奥山由之が担当しています。もっとも面白いのは2話目の蓮見翔脚本で、岡山天音と岸井ゆきの、荒川良々の好演も相まっておかしくて真実味もある話になっています。相手の嫌な部分を握り寿司にたとえ、一つ一つは小さな事でも寿司桶が寿司でいっぱいになって別れを思い立ったという展開が実に納得できました。
1話目と5話目の生方美久は普通の出来(長い方が真価を発揮するタイプ?)。3話目の根本宗子はいかにも舞台の人らしい作品。4話目の奥山由之は自分だけたくさん俳優出してずるいぞ、という感じでした。
他のキャストは広瀬すず、仲野太賀、今田美桜、森七菜、草なぎ剛、吉岡里帆、神木隆之介らで、自主制作としては破格の豪華さですね。
▼観客10人ぐらい(公開7日目の午後)1時間26分。
売れない役者の若い男3人が一緒に暮らす家の前にある日、赤ちゃんが置いていかれた。元カノが置いたらしい。3人は赤ん坊を「どんちゃん」(「どーん」としているから)と名づけ、協力しながら慣れない子育てに奮闘する。
「横道世之介」(2012年)「さかなのこ」(2022年)の沖田修一監督が自分の娘を使って撮影した自主制作映画。撮影は2014年から2017年にかけて行われたそうです。ドキュメンタリー風の作品と予想していましたが、物語の設定はあり、緩やかにストーリーが進行します。ですから、他人のホームビデオを見せられて「どうだかわいいだろう」と強制されるような部分はなく、沖田監督独特のほんわかムードが漂う作品になっています。
基本的に赤ちゃんはずーっと見ていても飽きないもの。映画もどんちゃんが出てくる部分は面白いんですが、3人の役者の売れないエピソードはどんちゃんパートより落ちる感じがあるのは否めません。要するに「子供と動物には勝てない」わけです。上映時間も2時間程度にまとめた方が良かったと思います。
売れない役者を演じるのは坂口辰平、大塚ヒロタ、遠藤隆太の3人。宇野祥平、黒田大輔、山中崇がゲスト的に出演しています。
映画終了後、どんちゃんから「もうすぐ11歳になる」とのメッセージが流れてびっくり。他人の子の成長は早いのです。公式サイトによると、映画は2022年から各地の映画祭などで上映が行われており、東京では2月21日から新宿武蔵野館で公開されます。
▼観客10人ぐらい(公開6日目の午後)2時間37分。
Netflixで配信が始まったクレイアニメ「ウォレスとグルミット 仕返しなんて怖くない!」は「ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ」(1990年)の続編。と言われても前作見ていないんですが、探したらニコニコ動画にありました。Netflixには2本一緒に配信してほしいものです。
新作はウォレスとグルミットの活躍により前作で捕まった宝石泥棒のペンギンが、収容されている動物園の中から、ある方法で仕返しを図る、というストーリー。35年ぶりの続編というのが凄いですが、それほど邪悪なペンギンのキャラに魅力があったのでしょう。相変わらず評価も高く、IMDb7.7、メタスコア83点、ロッテントマト100%。アニー賞など多くの賞の候補になっています。
さっぱり面白くなくて、僕の見方が悪いのかと思いました(途中で少し寝ちゃったし)が、海外の評価を見ても、IMDb6.7、メタスコア47点、ロッテントマト54%と散々。日本では日経電子版が★4個、週刊新潮が83点を付けていたのが数少ない高評価でした。キネ旬では評者3人が★1個、2個、1個。まあ当然と思える評価の低さではありますね。
映画の中で映画を撮影するシーンが進行し、映画に関する言及も多いですが、もはや評価できないウディ・アレンの諸作と比べても大きく見劣りがして、どこも感心するところのない出来に終わってます。
ナンニ・モレッティ監督が主人公の映画監督を演じていますが、自分で演じる必然性はないように思いました。けっこう自己顕示欲の強い人なんでしょうかね。
▼観客2人(公開13日目の午前)1時間36分。
「チネチッタで会いましょう」の中でナンニ・モレッティ演じる映画監督がジョン・チーヴァー原作「泳ぐ人」を撮りたいと言うシーンがあります。これ、1968年にバート・ランカスター主演で既に映画化されていて(邦題は「泳ぐひと」)、僕は高校時代に映画雑誌「ロードショー」の名画紹介連載でタイトルと大まかなストーリーを知りました。これまで見る機会がありませんでしたが、配信を探したらU-NEXTにあったので見ました。
アメリカン・ニューシネマの傑作の1本とされ、キネ旬ベストテン6位にランクされています。聞きしに勝る傑作だと思いました。隣人たちのプール伝いに泳いで家へ帰ろうと決心した主人公の背景がだんだん分かってくる構成が素晴らしく、ラストは予想が付きますが、呆然とさせられます。主人公が過去の記憶を次第に思い出し、とんでもなく怖いラストを迎える筒井康隆の傑作短編「鍵」を思い出しました。夏の1日の話なのに、日差しが翳り、主人公が寒さに震えるようになるという描写が記憶を取り戻していく主人公の姿と重なって効果を上げています。
監督はフランク・ペリーですが、IMDbとWikipediaによると、一部のシーン(主人公ネッドと若いジュリーのシーンなど)をランカスターの友人のシドニー・ポラック監督が撮り直したそうです。プロデューサーのサム・シュピーゲルがペリーを解雇したためで、IMDbではポラックとの共同監督となっていますが、映画にポラックのクレジットはありません。
原作を収録した短編集「巨大なラジオ/泳ぐひと」 (新潮社)が村上春樹訳で2018年に出ていたのでamazonで購入しました。上下二段組み16ページの短さ。映画はこれを基に多くのエピソードとセリフを追加しています。素晴らしいのはそれがすべて原作のエッセンスを損なっていないこと。どころか、効果的に補強しています。脚色のエリナー(エレノア)・ペリーはフランク・ペリー監督の奥さんで、「去年の夏」(1969年、フランク・ペリー監督)、「パリは霧にぬれて」(1971年、ルネ・クレマン監督)などの脚本を担当しています。
U-NEXTで配信しているソフトは画質が大変良いです。修復した上で、2015年に発売されたブルーレイディスクのものなのでしょう(ブルーレイは日本未発売。DVDはあります)。
IMDb7.6、ロッテントマト100%。1時間35分。
ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作。監督のカルラ・シモンは自身の体験を基にした監督デビュー作「悲しみに、こんにちは」(2017年)で評価を集めた人です。今回はスペインのカタルーニャ地方が舞台で、ソーラーパネルを設置するため土地を明け渡すよう地主から求められた桃生産農家を描いています。
原題の「アルカラス」はカタルーニャの奥地にある村の名前。シモン監督の父親の兄弟はカタルーニャ地方で桃を生産しており、それがモデルになったそうです。農業か太陽パネルかという対立軸で見ていくと、テーマが散漫になったきらいがありますが、監督は揺れる農家を描きたかったのでしょう。
出演者はカタルーニャ地方でオーディションで選出した演技素人の人たち、言葉はすべてカタルーニャ語だそうです(僕は聴いても分かりません)。気になったのは幼女の裸の胸にボカシがかかることで、配給会社が気を回して行ったんですかね? かえって不自然に感じました。
IMDb7.0、メタスコア85点、ロッテントマト93%。
▼観客3人(公開2日目の午後)2時間1分。
ジョージアの小さな村にあるロープウェーを舞台に描く心優しいドラマ。父親が亡くなって村に帰ってきたイヴァ(マチルド・イルマン)はロープウェーのゴンドラの乗務員として働き始める。もう一つのゴンドラの乗務員はニノ(ニニ・ソセリア)。すれ違うゴンドラで2人が交わす奇想天外なやりとりは、まるでゴンドラ合戦。その楽しさは、やがて地上の住民も巻き込んでいく。
ほとんどセリフのない映画ですが、ファイト・ヘルマー監督がこういう映画を撮るのは4作目だそうです。パンフレットによると、実際にはゴンドラは1台しかなく、それを映画のマジックで2台に見せているとのこと。確かにあんな田舎で2台のゴンドラは必要ないのでしょうけど、驚きました。女優2人が良いです。
IMDb6.7(アメリカでは未公開)
▼観客6人(公開7日目の午後)1時間25分。
ドラマ「グランメゾン・東京」(2019年、全11話)と昨年12月29日に放送したスペシャルドラマを見た上で見ました。
フランス料理の一流シェフ尾花夏樹(木村拓哉)はパリで新店舗「グランメゾン・パリ」を立ち上げ、右腕の早見倫子(鈴木京香)とともにミシュラン三つ星の獲得を目指す。巨匠たちがしのぎを削る本場フランスでの三つ星は尾花の悲願。だが、満足いく食材を手に入れることにすら高い壁があった。
黒岩勉脚本、塚原あゆ子監督はテレビシリーズと同じコンビ。これまでのドラマを見ていた方が楽しめますが、見ていなくても話は分かります。手堅くまとめた作品と思います。
▼観客多数(公開初日の午前)1時間58分。
サンデー毎日の映画評に「冒頭のフィッシング詐欺シーンがリアル。身につまされるほど恐ろしい」とありましたが、パソコンのエラー表示に驚いて電話してきた人から金を巻き上げるという極めてよくある手口ですね。その詐欺に引っかかって200万ドルを失った隣人の老婦人が自殺。唯一、優しくしてくれた人だったため、ビーキーパー(養蜂家)の主人公アダム・クレイ(ジェイソン・ステイサム)が怒り、詐欺組織に復讐を図る、というアクション。
とにかくステイサムが圧倒的に強く、次々に組織の男たちを秒殺していきます。たった1人の老婦人の敵討ちとしては殺しすぎではと思えますが、詐欺の被害者はかなりいるはずで、組織を叩き潰す名目はありますね(やり方は違法ですが)。ビーキーパーとは米国の極秘プログラムで、主人公は既に引退していたんですが、現役のビーキーパーより素早く動き、とても強いです。アクションは申し分ないので、もう少しリアル方向に話を振ってくれると良かったかなと思います。
監督は「エンド・オブ・ウォッチ」(2012年)「フューリー」(2014年)などのデヴィッド・エアー。
IMDb6.3、メタスコア53点、ロッテントマト71%。
▼観客20人ぐらい(公開7日目の午前)1時間45分。
TBSラジオ「アフター6ジャンクション2」で毎年恒例のシネマランキングを特集していました。「チャレンジャーズ」(ルカ・グァダニーノ監督)を1位に推すゲストが何人かいて、お気に入りに入れっぱなしだったのを思い出し、配信で見ました。
テニス選手タシ・ダンカン(ゼンデイヤ)が親友同士の男子テニス選手2人(ジョシュ・オコナー、マイク・フェイスト)を愛するという女1男2のラブストーリー。ゼンデイヤはテニス選手としてはスリムすぎる感じもありますが、ひ弱さはなく、抜群のスタイルの良さと相まって有無を言わさない魅力がありますね。男2人が同性愛的な関係なのがグァダニーノの映画らしいところです。アングルとカメラワーク、音楽の使い方が斬新で、グァダニーノのセンスの良さを感じさせる作品になっています。amazonプライムビデオで見放題配信しています。
IMDb7.1、メタスコア82点、ロッテントマト88%。
統合失調症を発症した姉と、姉を病気と認めず、自宅に閉じ込めた両親を息子(藤野知明監督)が20年間にわたって撮影したドキュメンタリー。タイトルの答えは「十分な治療を受けさせた方が良かった」だと思いますが、息子の問いに対して老いた父親はそうは答えません。自分が行ってきたことを晩年になって間違いだと認めることは自分の人生を否定するようなものなので考えを改めることは難しいでしょう。撮影期間が長期に及んだため、映画は統合失調症よりも家族がテーマの中心になったように思えました。ある家族の不幸な選択とその後を詳細に追った映画と言えます。
精神障害者などを自宅の座敷牢や蔵の中に閉じ込める行為は小説や映画で(特にホラーで)描かれてきました(私宅監置と言い、1950年に廃止されるまで精神病者監護法で合法だったそうです)。それができるのは裕福な家でしょう。この映画に登場する北海道の家族は両親とも医師で研究者、姉も医学部に4年かけて合格した優秀な一家(監督は北大農学部)。家自体も大きくて立派です。姉は座敷牢のような部屋に監禁されていたわけではなく、自宅から出られない状態に置かれていただけですが、それでも適切な治療を受けていれば、違った人生があったのではないかと想像できます。
才媛という言葉がふさわしい容姿だったのに、意味不明のことをしゃべり、怒鳴り、両親が対応に苦慮する様子は見ていてつらいです。母親に認知症の症状が現れた後、父親はようやく娘を入院させますが、最初の症状から25年もたっていました。退院して自宅に帰った後、50歳を過ぎた姉の頭には白髪が目立つようになります。長い時の流れを感じさせ、蕭然とした気持ちにならざるを得ません。
親に子供の人生を奪う権利はありませんし、生き方を決める権利もありません。一般的に子供のためを思って行うことが、本当に子供のためになっているかと言えば、そうではないケースも多いでしょう。両親は娘を病気と思っていませんが、パンフレットによると、姉自身、自分を病気と認めていなかったそうです。監督が両親を厳しく責めているわけではないことが、この映画をつらいだけではなく、時折ユーモアを感じる温かさを持った作品にしています。
常時カメラを向けられることで家族が撮影されることに慣れてくるのは「ぼけますから、よろしくお願いします。」(2018年、信友直子監督)と同じで、カメラの前で本音を話すことができるのもこのためでしょう。家族でなければできない撮影の仕方です。監督は「統合失調症の対応の仕方としては失敗例」としていますが、だからこそフィルムに閉じ込めたままではなく、広く公開した意義は大きいと思います。
▼観客15人ぐらい(公開初日の午後)1時間41分。
東京の児童養護施設で暮らす子どもたちに密着したドキュメンタリー。この作品もまた撮影対象から信頼を得ないと、成立しないでしょう。
入所者は18歳になり、自立のめどがつくと、施設を退所しなければいけません。撮影対象が幼児から徐々に上がっていく構成は自立の時期が近づくにつれて子供たちがどう変わっていくかを見せることになります。映画はそうした子供たちの生活と考え方を見せますが、なぜ施設に入ることになったのかなど身の上には一切触れていません。「大きな家」のタイトルとは裏腹に、子供たちは施設を家とも家族とも思っていません。会いに来ない母親を慕う子供が多いことに胸が痛みます。
日本には親と離れて社会的養護の下で暮らす子供たちが4万2000人いるそうです。親と会えない寂しさの代わりにはなりませんが、せめて経済的な支援はもっと必要なのではないかと思います。見ていてほっとしたのは退所する女性の中に明るく朗らかな子がいたこと。一人暮らしになると、大変なことも多いでしょうが、明るさを失わずに頑張ってほしいと思います。
監督は「14歳の栞」(2021年)、「MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」(2022年)の竹林亮。この映画も「14歳の栞」同様、パッケージ化と配信はしない方針だそうです。
▼観客10人ぐらい(公開2日目の午前)2時間3分。
平凡な大学教授ポール・マシューズ(ニコラス・ケイジ)が何百万人もの人の夢に現れるようになり、悪夢のような事態に巻き込まれる姿を描いた作品。
夢の中にはただ現れるだけで何もしないので、当初はメディアに取り上げられ、一躍有名になりますが、そのうち夢の中で人を襲うようになり、一気に嫌われてしまいます。なぜ夢に出てくるのか一切説明がないのが不条理的な面白さでもあり、物足りなさでもあるなと思います。
知らない人にまで自分のことが知られているという序盤は筒井康隆「おれに関する噂」を彷彿させる部分もありました。監督は「シック・オブ・マイセルフ」(2022年)のクリストファー・ボルグリ。この映画でニコラス・ケイジはゴールデングローブ賞コメディ・ミュージカル部門の主演男優賞にノミネートされました。
IMDb6.9、メタスコア74点、ロッテントマト91%。
▼観客6人(公開7日目の午後)1時間41分。
柚木麻子の同名小説を堤幸彦監督が映画化。大御所作家・東十条宗典(滝藤賢一)の酷評により、本が出せなくなり、不遇な日々を送っている新人作家・相田大樹こと中島加代子(のん)。文豪に愛された「山の上ホテル」に自腹で宿泊した際、東十条が泊まっていることを知り、復讐を兼ねて東十条を策略に陥れ、文壇でのし上がろうとする、というコメディ。
のんがおかしくて良いですし、クスクス笑える演出にも不備はないと思いますが、堤幸彦監督作品なら今年は「夏目アラタの結婚」の方が強力に好きです。東十条の娘役で髙石あかり、書店員で橋本愛が出演。
エンドクレジットの後に橋本愛主演「早乙女カナコの場合は」という作品の速報が流れます。これ、のんが同じ役で出てくるのでスピンオフかと思ったんですが、原作(「早稲女、女、男」)は同じ柚木麻子であっても本作と直接の関係はなく、監督も矢崎仁司でした。2025年3月14日公開だそうです。
▼観客10人ぐらい(公開初日の午後)1時間39分。
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