2005/09/27(火) 「リバーヘッド」
24日の日記を読んだ家内が「ふるさときゃらばんの公演、行く?」と聞いてきた。なんと、きょう公演があるというのだ。ああいうことを書いた手前、見ておかないとまずいだろう。家族5人で県立芸術劇場演劇ホールへ行く。ふるさときゃらばんの公演を見るのは「瓶ヶ森の河童(かめがもりのしばてん)」(2002年10月26日の日記参照)以来、ほぼ3年ぶり。
ホームページの解説には「上流と下流の心をつなぐ新しいMUSICAL 森と川と水源地のものがたり」とある。対象は小学生以上。なるほど、子どもでもよく分かるように作られている。というか、この作りは子どもを意識したものだと思う。
第一幕は狩猟で暮らしていた人間が農耕へと移る過程を描く。人間たちに米作りを教えるのは中国から海を渡ってきた河童(この河童、「瓶ヶ森の河童」に出てきた河童と同じである)。山奥の村で暮らしていた人々は豊かな暮らしを求めて川下に下りてくる。田んぼを作り、橋を架け、都会との交易で豊かな暮らしをするが、やがて暴風雨が来て、橋は流れ、田んぼも畑も泥に埋まる。山へ帰ろうという人もいるが、もう一度橋を架けようという声が大きくなり、「橋を架けよう、橋を架けよう」という合唱で一幕は終わる。
第二幕はいきなり現代の話。雨が2カ月も降らず、渇水に見舞われた都会は断水する。ある家族が「水はどこから来るんだろう」と山奥の村へ出かける。そこにはダムがあり、かつての村はダムに沈んでいた。一度は村を捨て、都会に出た人々が帰っており、一人の老人が「川下へ行った孫娘のためにダムの建設に判を押した」と話す。都会の暮らしは便利だが、パチンコなどの遊びにはすぐに飽きる。などという場面を描いた後、地球の水がどこから来たかという説明になり、最後は「地球は水の惑星」という合唱となる。
子ども向けの作りと感じたのはこうした水の説明があるからだ。ドラマとしても総論で終わった観がある。最初にテーマありきの作りなのだ。だからあまり心に響かない。こういうドラマは各論の方が面白くなる。孫娘の幸せのために判を押したじいさんの話を取っかかりに話を作っていけば、具体性が出たのではないかと思う。
「戦後最大の台風14号の被害に遭われた皆さんにお見舞い申し上げます」。舞台終了後、団員の一人が言った。洪水があったり、断水があったりでタイミング的にはぴったりというか何というか。しかし、そうしたことを言うふるさときゃらばんの姿勢も団員の熱意も好ましいと思う。ホームページを見ると、子ども向けの作品が多いようだ(「走れ!ケッタマシン」は違うのか?)。家族そろって楽しめるミュージカルが方針の一つなのかもしれないが、次は大人向けのミュージカルを見せて欲しい。
「8年前から漁がすたれて島民はみんな生活保護で暮らすようになった。生活保護で金はもらえるが、誇りも少しずつ失う」。
ロアルド・ダール原作の童話「チョコレート工場の秘密」をティム・バートン監督が映画化。前作の「ビッグ・フィッシュ」に続いて、家族愛を歌い上げるファンタジーである。3連休の初日のためか劇場は満員。200席ほどの映画館だが、左端の上から2番目と1番目の並びの席に家族5人で座る。上の方は冷房の利きが悪く、暑かった。睡眠不足のためもあって、途中でウトウト。映画がつまらなかったわけではないが、同じ家族愛ならば、「シンデレラマン」の後では少し分が悪いのは確かだ。いつものように快調なダニー・エルフマンの音楽とジョニー・デップの演技を楽しんだけれど、話自体にちょっと物足りない思いも残った。
同じくラッセル・クロウ主演の「ビューティフル・マインド」(2001年)を見た時に、ロン・ハワードはかつてのハリウッド映画の美点をとても大切にしていると感じたが、この映画でもその印象は変わらない。家族の生活のために再起するボクサーの姿を真摯に描き、伝統的なハリウッド映画のど真ん中に位置する作品だと思う。ミステリ的な仕掛けのあった「ビューティフル・マインド」よりも話がストレートなので、主人公への感情移入もしやすい。脚本と撮影と演出と俳優たちの演技のレベルが高く、どれにも文句を付けようがない。微妙にケチを付けるとすれば、作品が正直で優等生すぎるところだろうが、ハワードは元々そういう作品を目指しているのだから意味がないだろう。娯楽映画の王道と言える物語と手法で映画を作り、期待を裏切らない作品に仕上げたハワードの手腕には感心せざるを得ない。