2025/11/09(日)「プレデター バッドランド」ほか(11月第1週のレビュー)

 宮崎市出身のグラビアアイドルで女優の今森茉耶が「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」(テレ朝)から降板することが発表されました。未成年(19歳)なのに飲酒が発覚したことが理由で、所属事務所も契約解除という厳しい処分。今森茉耶に関しては週刊文春が9月、2週にわたってスーツアクターとの不倫とJリーガーとの二股を報じました。

 その時は3カ月先まで既に撮っているからとの理由で「ゴジュウジャー」降板はありませんでしたが、子ども向け番組に不倫女優の出演が許されるはずもなく、テレ朝と東映は密かに準備していたのでしょう。準備が整ったので飲酒を理由に降板発表という流れなのではないかと思います。今日の放送はゆっくり配信で見ようと思ったら、まだ配信に出てません(仮面ライダーはあるのに)。Yahoo!ニュースによると、オープニングから今森茉耶の姿は消されてたとか。残念です。

「プレデター バッドランド」

「プレデター バッドランド」パンフレット
パンフレットの表紙
 これまで悪役だったプレデターを主人公にしたSFアクション。監督が「プレデター ザ・プレイ」(2022年、ディズニープラスで配信)で高い評価を集めたダン・トラクテンバーグなので隙のない仕上がりですが、プレデターの凶悪で醜い容貌は主人公よりも悪役の方が似合っています。それが気にならなくなるほどの面白さには至っていませんでした。続きを意識したラストでしたが、さてどうなるでしょうね。

 ヤウージャ族(プレデター族)の若き戦士デク(ディミトリアス・シュスター=コローマタンギ)は一族の落ちこぼれと見なされ、父親は兄クウェイにデクの処刑を命じる。それに応じなかったクウェイを父は殺し、デクは間一髪、難を逃れて最悪の土地ゲンナ星へ向かう。そこに住む怪物カリスクを倒し、持ち帰れば、父を見返すことができる。ゲンナ星は凶悪な生物が跋扈する世界。そこでデクは地球から来てカリスクに襲われ下半身を失ったアンドロイドのティア(エル・ファニング)と出合う。ティアは同じくアンドロイドのテッサ(エル・ファニングの二役)らとカリスクを狙っていたのだった。デクとティアは協力し合うが、テッサの一行と対立することになる。

 このストーリーならプレデターである必要はなかったような気もします。トラクテンバーグ監督も「純然たる『アドベンチャー映画』」と言っていますが、まず面白いです。殺伐としたストーリーにユーモアの潤いをもたらすエル・ファニングを出したのが大きなポイントですね。続編作るなら、ファニングも出して欲しいです。
IMDb7.6、メタスコア71点、ロッテントマト85%。
▼観客多数(公開初日の午前)1時間46分。

「旅と日々」

「旅と日々」パンフレット
「旅と日々」パンフレット
 つげ義春の原作「海辺の叙景」と「ほんやら洞のべんさん」を組み合わせて三宅唱監督が映画化。ロカルノ国際映画祭で金豹賞を受賞しました。原作はどちらも短編で、映画は「海辺の叙景」の脚本を書いた韓国人の女性脚本家がスランプを感じて東北に旅に出る設定になっています。旅先で描かれるのが「ほんやら洞のべんさん」の話というわけ。「ほんやら洞」とは雪のカマクラの意味だそうですが、映画に「ほんやら洞」は出てきませんでした。

 前半はある島の夏の海が舞台。海岸でぼんやりしていた夏男(高田万作)はよそから来た渚(河合優実)と出会う。なんとなく一緒に島を散策して気のあった2人は翌日も会うことを約束する。台風が近づく中、翌日は雨。2人は強い波の中、海で泳ぐ。なんてことはない話ですが、映画を見た大学教授の魚沼(佐野史郎)が「セクシーで官能的」と感想を述べるのに納得します。河合優実が意外なことに水着姿も見せて確かにセクシーでした。この前半も良いのですが、メインはやっぱり後半のユーモア。

 冬。急逝した魚沼教授から生前、「気晴らしに旅行にもで行くと良いですよ」とアドバイスを受けた李(シム・ウンギョン)は東北へ旅立つ。宿の予約もしていなかったので、ホテルは満室で泊まれず、ホテルの人に紹介されて大雪の中、古びた宿にたどり着く。その宿を営むべん造(堤真一)はものぐさで、まともな食事も出ない。布団も自分で敷かなければならない。べん造は「錦鯉のいる池に行くか」と李を連れ出す。

 三宅監督はつげ義春作品の中でこの2作が特に好きだそうです。べん造を演じた東北弁の堤真一が出色のおかしさでした。大きなドラマはありませんが、主人公にとっては非日常の中での出来事がいちいち面白いです。シム・ウンギョンも好演しています。
▼観客6人(公開初日の午後)1時間29分。

「フランケンシュタイン」

 Netflixで見ました。モンスターが好きなギレルモ・デル・トロ監督が最初のSFとされるモンスター小説の名作を映画化。北極でのプロローグに始まって、第1部「ヴィクターの話」、第2部「怪物の話」で構成してあり、第1部はヴィクター・フランケンシュタイン(オスカー・アイザック)の回想、第2部はヴィクターが創ったモンスター(ジェイコブ・エロルディ)の回想となっています。

 ヴィクターはマッド・サイエンティストの始祖でもあり、前半、死体をツギハギしてモンスターを創る過程はサイコパスの様相です。ただ、その前にいくつかの実験で死体を電流で動かしており、科学的であったりします。このあたり、デル・トロ監督はしっかり作っていて、原作を正攻法で描いていると思いました。特徴的なのはモンスターに傷の再生能力があることで、モンスターは撃たれても斬られても死にません。フランケンシュタインのモンスターが登場する作品は多いですが、これは初めて見る設定でした。

 モンスター役のエロルディは「プリシラ」(2023年、ソフィア・コッポラ監督)でエルヴィス・プレスリーを演じた俳優。身長196センチで、アイザックとは22センチ差なのでモンスター感がありますね(小説のモンスターは8フィート=約244センチ)。ヴィクターの弟と結婚するエリザベスを「X エックス」三部作のミア・ゴス、その父親をクリストフ・ヴァルツが演じています。
IMDb7.7、メタスコア78点、ロッテントマト86%。2時間29分。

「盤上の向日葵」

 柚月裕子の原作を熊澤尚人監督が映画化。話が古く、演出も古く、現代の将棋を知らない人が作った映画としか思えませんでした。将棋の真剣師って、昭和初期の設定ならリアリティーがあったのでしょうが、映画の舞台となった昭和から平成にかけての時代にはもはや存在していなかったでしょう。

 山中で身元不明の白骨死体が発見される。遺体には7組しか現存しない希少な将棋駒があったこと。駒の持ち主は将棋界で頭角を現した棋士・上条桂(坂口健太郎)だった。桂介を巡る捜査線上に、賭け将棋で裏社会を生きた伝説の真剣師、東明重慶(渡辺謙)が浮かぶ。桂介と東明の間に何があったのか?

 一手指すたびに相手をにらむ、判で押したように毎回にらむ演出は対局を見たことがないんじゃないかと思える撮り方。将棋が一番強いのは10代から20代にかけてということが通説で、東明が苦戦する相手の老真剣師・兼埼(柄本明)が強さを保つのはほとんど無理な状況になっています。まあ、プロじゃないからあり得るのかもしれませんが。
▼観客6人(公開7日目の午後)2時間3分。

「恒星の向こう側」

 東京国際映画祭で福地桃子と河瀨直美が最優秀女優賞を受賞した中川龍太郎監督作品。会場のヒューリックホール東京は900席近い広さですが、ほぼ満席でした。これは映画の人気というよりゲストだった久保史緒里の人気が影響したのかもしれません。

 映画祭の公式サイトから紹介記事を引用すると、「母の余命を知り故郷に戻った娘・未知は、寄り添おうとしながらも拒絶する母・可那子と衝突を重ねる。夫・登志蔵との間に子を宿しながらも、亡き親友への想いに揺れる彼の姿に不安を募らせる未知。母の遺したテープから“もうひとつの愛”を知ったとき、彼女は初めて母を理解し、母から託された愛を胸に進んでいく」ということになります。

 母が河瀬直美で娘が福地桃子。特に河瀬直美が怖い母親を演じていて女優賞にも納得します(この人、普段から怖そうです)。福地桃子は本来はユーモアのある役柄が似合う女優と思いますが、この映画でも好演しています。この母娘の確執に絞れば良かったのに、映画は他の要素が入ってきて話を分かりにくくしています。

 一つは冒頭、福地桃子が勤める養護施設での騒動。騒ぎを起こした外国人の少年アントニオをかばう久保史緒里の姿を描いていて、ここは久保史緒里の少しヒステリックな演技が良いのですが、映画全体とのかかわりが今一つ見えません。スタッフからも「このシーンがなぜあるのか分からない」という意見が出たそうです。終盤にもう一度、エピソードの続きを描いた方が良かったんじゃないですかね。

 もう一つは福地桃子の夫・寛一郎が演出する舞台のシーン。その舞台に出ているのが朝倉あきと南沙良なんですが、これは現実を題材にした内容で、舞台のシーンから現実の過去に話が移っていきます。説明が何もないので最初は戸惑いました。

 上映後の舞台あいさつと質疑応答には久保史緒里のほか、中川監督と朝倉あきが登壇しました。中川監督の発言は明快だったんですが、物語の狙いを脚本に落とし込む段階でうまくいってない印象を受けました。

 タイトルは母娘の距離の遠さを表しているようです。英語タイトルは“Echoes of Motherhood”(母性のエコー)と直接的でこちらの方が内容を想像しやすいと思います。1時間31分。