2006/06/02(金)「いちご白書」
別に傑作ではないのだが、60年代の学生運動の雰囲気は伝わってくる(映画の公開は1970年)。ノンポリのボート部の学生サイモン(ブルース・デイヴィソン)が何となく学生運動にかかわる。きれいな女子学生リンダ(キム・ダービー)に惹かれたせいもあるが、そのうちに大学の姿勢に怒りを感じて、本気でかかわるようになる。クライマックス、大学を占拠した学生たちを州兵が催涙ガスをまきながら強制排除するシーンは有名。
監督のスチュアート・ハグマンは「スパイ大作戦」などテレビの作品が多い。ジョニ・ミッチェルが歌う主題歌「サークル・ゲーム」はラジオでよく流れていたので懐かしかった。。
交通事故で始まり交通事故で終わる映画だが、タイトルの「クラッシュ」は人と人との衝突を意味しているようだ。毎日毎日、苛立ちながら暮らしている白人、黒人、ペルシャ人、中国人、メキシコ人たちのエピソードをポール・ハギス監督はロサンゼルスの縮図として描き、わずかな前進と希望を感動的に提示して映画を終える。これがロサンゼルスの映画人に支持されないはずはなく、アカデミー作品賞も納得できる。
「人生って何? 人生って何?」と始まった歌詞が「愛は人生、愛は人生」と変わっていく。ひどい男を殺して刑務所に入った川尻松子(中谷美紀)が自分を愛してくれた平凡な理容師(荒川良々)の元へ行こうと決意する心情の変化をたどる場面に合わせて流れるこの「What Is A Life」(AIと及川リンのコラボ)がもっともミュージカルらしい歌だと思う。男の元で意外な事実を知った中谷美紀の泣き笑いの表情もいい。パンフレットによれば、監督の中島哲也は最初に場面に合わせた歌を各アーティストに頼んだそうだ。歌と踊りで主人公の心情を表現するというミュージカルの根本的な在り方がこの映画にはある。