2006/11/15(水)「岸辺のふたり」

 2001年のアカデミー短編アニメ賞を受賞した8分間の作品。監督はマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット。

 原題は「Father and Daughter」。父親と小さな娘が自転車で岸辺にやってくる。父親は娘をギュッと抱きしめた後、一人でボートに乗ってどこかへ行く。娘は毎日毎日、何年も何年も自転車で岸辺を訪れ、父親が帰ってくるのを待つ。やがて娘は成長し、結婚し、子どもが生まれ、年老いる。そして、ある日…。

 少女の人生を8分間に凝縮させたモノトーンの詩的な作品。セリフはない。「クレヨンしんちゃん

 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」で「今日までそして明日から」をバックに描かれる自転車のシーンをなんとなく思い出した。

 この作品だけで感動するというよりも、ここからインスパイアされることで感動する作品なのではないかと思う。

2006/11/14(火)「デスノート The Last Name」

 「デスノート The Last Name」パンフレット先に見た子どもから結末部分をネタバレで聞かされてしまった。最後のトリックを知って見たのだから、僕の感想はそれ以外の部分しかあてにならないことをおことわりしておきます。

 主要登場人物は美男美女ばかり。ライトとLの頭脳戦を描きつつ、これは由緒正しくアイドル映画なのではないかと思う。男性は戸田恵梨香、片瀬那奈、上原さくら、満島ひかりに目を奪われ、女性は正統的な二枚目である藤原竜也と癖のある松山ケンイチに満足するのだろう。金子修介監督、ロマンポルノの時代から女優の趣味が良かった(というかカワイイ系に偏っていた。ガメラシリーズの中山忍もそうだ)が、当然のことながら女性客も意識してサービス精神旺盛だ。前作の瀬戸朝香、香椎由宇も見栄えが良かったけれど、今回もビジュアル面では抜かりがないのである。演技力云々よりも絵として映える女優を選んでいるとしか思えない。だから「デスノート」は前編も後編も結局のところ、気楽に楽しめるアイドル映画なのだろう。アイドル映画としてはストーリーも凝っていて良くできているので、恐らくアイドルを見るために再見する人もいるのではないか。という消極的な評価しか僕にはできない。そんな中、美男の範疇には入らない鹿賀丈史が原作とは違って重要な役回りになっているあたりが面白い。他の若い俳優たちはゲームの駒だが、鹿賀丈史はドラマを背負う役割。ここをもっと強調すると、映画はさらに面白くなっていたのではないかと思う。ドラマが軽く、切実な部分がないのはこうしたゲーム感覚映画の宿命か。

 前編は原作の4巻目あたりまでを映画化したものだが、後編はその後の12巻までをグシャッと縮めて結末を映画独自のトリックに変えてある。原作で最も感心したのは、というか、そこにしか感心しなかったのだが、第7巻の驚愕的な展開。大きなトリックがぴたりと決まって着地する快感があった。ここは重要な部分なのでちゃんと映画でも描かれているが、短いので、衝撃は原作に到底及ばない。最初からライトの策略の一部として描かれるため、原作のように物語をひっくり返す驚きがないのだ。もっとも原作を読んでいる観客には原作通りに描いたにしても、もはや衝撃でもなんでもない。原作を読んだ観客に対するサービスが結末部分の変更で、残念ながら、先に書いたような事情があるので、僕には全然面白くなかった。ただ、小さく感じた原作のトリックよりはよく考えてあると思う。裏の裏の裏をかくだけの原作のトリックを映画でやると、分かりにくく、見ていてバカバカしくなっていただろう。

 というわけで原作を全然知らず、白紙の状態で見た1作目の方が僕には面白かったが、それは当たり前のことなのだろう。それでも言えるのは、今回のラストのトリックはやはり映画独自だった前作のラストのトリックほどうまくできてはいないということ。前作のラストに感心したのはそれが単なるトリックではなく、夜神月という男が悪の主人公であることをはっきりと宣言する場面になっていたからだ。考えてみれば、あれも観客が思いこんでいる物語をひっくり返すトリックだった。今回はよく考えたトリック以上のものではないのである。トリックのためのトリックというレベルでは面白くない。ただ、金子修介の主要キャラを立たせる演出はそれなりに評価されていいと思う。死に神のCGや川井憲次の音楽も相変わらず良かった。

 この日記ではなく、mixiの方の日記を読み返してみたら、原作を9巻まで読み終えた7月1日の日記に僕はこう書いていた。「気になるのは映画の後編がどこまで描くかということ。とても12巻までは無理だろう。第3のキラを出さずに第1、第2のキラ対Lの対決で終わるのではないか。映画の後味を考えれば、キラもLも両方死ぬ結末を僕なら考える」。まあまあの線ではないか。

2006/11/12(日)「手紙」

 「手紙」パンフレット「そんなことしたらあかん、大事なものやんか! そんなことしたらあかん!」。沢尻エリカ扮する白石由美子が兄からの手紙を破り捨てた主人公の武島直樹(山田孝之)に言う。ここで2人の仲が急速に接近してそれで映画は終わりになるのかと思ったら、その後にさらに本当の決着がある。罪を犯した者とその家族、犠牲者の家族の関係。原作は未読だが、そこまで描くのは大したものだと思う。しかし、全体的には主人公が漫才師を夢みることにどうしても違和感があった。山田孝之は本質的に暗いイメージなので、似合っていないのである。非常にうまく演じているのだが、似合っていず、中学の頃から笑いを目指していたとは思えない。とんとん拍子に人気者になることにはもっと違和感があるし、大企業の専務令嬢(吹石一恵)との愛と破局などは破局の場面に一工夫あるとはいえ、吹石一恵が登場した時から先が読める展開。会社の先輩である田中要次の過去と大検を目指す現在の姿などは泣かせるし、杉浦直樹の差別社会の本質を突いたセリフも泣かせる。そうした美点とあまりにもありふれた描写が混在していて、そこが評価をためらわせる。もっともっと脚本を練ることが必要だったのではないかと思う。

 原作が家にあったので、冒頭部分を少し読むと、原作では一人暮らしの老婦人の殺し方に明確な殺意がある。持っていたドライバーを首に刺すのである。映画はもみ合っているうちに老婦人が抵抗するために手にしたハサミが腹に刺さって死んでしまう(これは腹ではなく、首か心臓の方が良かったと思う)。盗み目的で侵入した上での殺人だから強盗殺人罪も仕方ないが、どちらかと言えば、過失致死の線が濃厚である。映画の改変は殺人者の兄に同情を持たせるためだろう。兄が強盗に入ったのは運送会社での激務で腰を痛め、仕事ができなくなったことで弟を大学に行かせられない恐れがあったため。そうした不遇な状況の中で、殺人者の家族に冷たい世間を描いていく。

 「俺みたいなヤツに言われたかねえだろうけどよ、夢があるなら、簡単に諦めんなよ」。リサイクル工場の先輩である倉田(田中要次)が言う。倉田は食堂で働く由美子が直樹にクリスマスプレゼントを贈ったことで、「最近の若いやつはやることは早いんだから」などと嫌がらせをするのだが、実は倉田自身、服役経験があり、直樹の兄の手紙を見てすべてを理解する。そして家族が誇れる父親になりたいと、大検を目指していることを告白するのだ。こういう地道な話で終わっても良かったのではないかと思う。直樹は「夢をあきらめるな」というアドバイスに従って工場をやめ、お笑いの道を友人の寺尾祐輔(尾上寛之)とともに目指すことになる。そこからの描写が安っぽい上にリアリティに欠け、映画はしばらく停滞してしまう。それが復調するのはお笑いをやめ、秋葉原の電気店で働く直樹が埼玉の倉庫へ左遷させられる場面から。倉庫を訪れた会社の会長(杉浦直樹)は「差別があるのは当然だ」と話す。「しかし、君は差別のない場所を探すんじゃない。ここで生きていくんだ」と言う杉浦直樹の言葉は力強く、直樹に言葉をかけた理由が由美子からの手紙だったことが胸を打つ。由美子自身、父親が多額の借金を背負って逃げ回った過去があるが、「私はもう逃げへん」と決意しているのである。その由美子の決意はたった一人の肉親を大事にするべきだという前記のセリフに表れている。

 こうした細部のエピソードは非常にうまい部分もあるのに、ぎくしゃくした感じが映画にはつきまとい、そこがとても残念だ。生野慈朗監督はテレビのベテランディレクターで、映画としては「いこかもどろか」(1988年)「どっちもどっち」(1990年)の2本が既にある(「いこかもどろか」は公開当時、映画評論家の山田宏一が絶賛していたが、見ていない)。描写がテレビドラマ的というのは短絡だけれど、お笑いの場面はテレビドラマを超えるものではなかったと思う。ついでに言えば、沢尻エリカが途中で眼鏡を外すのもよく分からない。最後まで眼鏡の方が良かった。「電車男」でも思ったが、山田孝之は男から見ても好感度がある。玉山鉄二は「逆境ナイン」とは全然違う役柄をうまく演じていて、これまた好感が持てる。

2006/11/11(土) 筆ぐるめ

 バージョン14のアップグレード・乗り換え版を買う。2800円。以前使っていた筆まめも考えたが、800円ほど高かった。年に一度、年賀状シーズンにしか使わないので、安いやつで十分。

 さっそくDVDをセットしてインストール。旧バージョンの住所録を探してHDD内をすべて検索し始めたのでストップ。旧バージョンを起動して住所録をマイドキュメント内にバックアップ。そのフォルダを検索指定する。やれやれと思っていたら、途中でフリーズ。別のアプリケーションを起動したのが悪かったか。仕方がないので電源を落として再起動。難なくインストールが始まったが、なかなか終わらない。イラストなどのコピーに時間がかかっているらしい。

 結局、Cドライブのインストール先を見たら、フォルダの容量は1.75GBもあった。データフォルダは別ドライブに置けるようにならないんですかね。起動も動作も遅いのはこの大量のデータのためのようだ。やれやれだな。アンインストールして最小インストールし直そう。ただし、最小インストールでも500MB以上になるようだ。

2006/11/09(木) PIXUS MP810

 「ミステリマガジン」12月号表紙MP960(7色インク)と最後まで迷ってこちらにした。価格は問題ではなく、印刷スピードの問題。はがきの文面印刷がMP960は32秒なのに対してMP810は13秒。この違いは大きい。年賀状100枚印刷することを考えると、大変な差になってしまう。それに僕は写真をあまりプリントしない。プリンタの主な用途は文書の印刷とCD・DVDラベルの印刷。きれいさは5色インクで十分(店頭に置いてあった写真を見比べたら、それほどの差はなかった)。

 プリントヘッドを設置し、インクを取り付けてヘッダの調整を自動で行うのに14分(以前のキヤノンのプリンタはヘッドの調整を手動でする必要があったのを思えば、かなり便利)。ソフトウェアのインストールに10分余り。USBで接続してまず、CDラベルを印刷してみる。速さきれいさはまあ、こんなものかというぐらい。自宅に置いてあるプリンタ(850i)とそれほどの差はない。

 驚いたのはスキャンのスピード。プレビューがあっという間。スキャンも凄く速い。うーん、スキャナは数年でこんなに進歩するのか。右のミステリマガジンの写真がテストでスキャンしたもの。いい感じである(これをスキャンしたのは今日、ミステリチャンネルを見ていたら、ミステリマガジンの編集長が出ていたから。初めて見たが、まだ若いんだな)。

 他の機能はまだ試していない。説明書を読んで、いろいろやってみよう。