2012/01/13(金)「恋の罪」
神楽坂恵に主役を張る力量はないということはよく分かった。ビリングでトップに来るのは水野美紀なのだが、水野美紀よりもはるかに多くの場面に出てくる神楽坂恵、見ているうちに飽きてくる。女性としてはともかく、女優としては魅力に欠ける。「冷たい熱帯魚」の時のような出方がちょうどいい。スクリーンを背負って立つには演技に幅がなさすぎるのだ。
水野美紀の出番が少ないのが個人的にはこの映画への大きな不満の原因になっているのだけれど、まあ、それはいいとして。東電OL殺人事件を描いたというよりもあの事件の設定だけを借りて、自由に作ったという感じの映画になっている。あの事件、昼間は一流企業のOLで夜は売春婦という被害者の実態がセンセーショナルだったが、この映画では大学の助教授に置き換えられている。これを演じる富樫真は昼間っから、どうも普通の人には見えないのが惜しいところ。そしてその二面性の理由が深く掘り下げられるわけでもないのが映画の決定的な欠陥を生んでいるようだ。
この映画で最も面白いのはその助教授と母親(大方斐紗子)の口論の場面で、憎しみ合った2人が激烈な言葉の応酬を繰り返し、ブラックなおかしさにあふれている。こういう感じで全編作ってくれれば、もっと面白くなっていただろう。
キネ旬11月下旬号の批評特集で首肯できたのは新藤純子、増田景子の2人の女性評論家による批評で、男性評論家が褒めているのに対してきちんと欠陥を指摘している。園子温は女性映画と言っているけれど、女性から評価が得られないのでは仕方がない。
それにしても、水野美紀、出番が少ないにもかかわらず、魅力は十分に確認できた。この映画を足がかりにもっと映画に出てほしい。
2012/01/04(水)「冬の小鳥」
描かれる韓国の70年代の子供たちの姿は「クロッシング」の北朝鮮の子供たちに比べれば、まだ幸せだが、映画の作りはこちらの方が上。へたなセンチメンタリズムに陥らないところがいい。ウニー・ルコント、名前を覚えておくべきだろうが、自伝的な作品だった第1作だったからうまくいった可能性もある。2作目にどんな映画を撮れるのかは未知数だと思う。「クロッシング」はベタな展開で社会派の視点が希薄なのが惜しかった。
2011/12/10(土)「ウッドストックがやってくる!」
原題は「Taking Woodstock」。アン・リー監督。60年代のフラワー・ムーブメントの雰囲気をよく伝えていると思う。人の波が本当の波のように見えてくるシーンなどはドラッグの効果を表している。なぜ、アン・リーがこういう映画を撮ったのかと思ったら、主人公はゲイなのだった。といっても、アン・リー自身はゲイではないらしい。
2011/12/10(土)「ゲゲゲの女房」
高層ビルがあったり、高圧線の鉄塔があったりするのは時代背景としてどうかと思う。公式サイトの制作ノートによると、「昭和30年代を“忠実”と“再現”に重点を置くのではなく“再現”しつつも、映画の表現として今の風景の中で昭和30年代を演じることの意味を大切にしました」とある。これは言葉で説明するのではなく、映画の表現として描くべきところだろう。貧乏をテーマにした内容は悪くない。痩せて貧相な宮藤官九郎はこうした役柄にぴったりだ。吹石一恵も良かった。
2011/11/23(水)「プリンセスと魔法のキス」
最近のディズニーは侮れないなと思う。「塔の上のラプンツェル」もそうだったが、おとぎ話を原作にしながら、とても力強い話にしている。もっともこの映画はE・D・ベイカーのジュブナイル小説「カエルになったお姫様」を原作にしているとのこと。この原作自体が「かえるの王さま」のアレンジらしい。カエルの姿に変えられた王子とキスしたら、自身がカエルになってしまうというまるで「シュレック」みたいな出だしから、レストラン経営を夢見る主人公のティアナが幸福な愛を勝ち取るまでを描く。監督はジョン・マスカーとロン・クレメンツ。音楽はランディ・ニューマン。