2025/11/02(日)「爆弾」ほか(10月第5週のレビュー)
「爆弾」

ただ、爆弾犯スズキタゴサクを演じる佐藤二朗はいつものような演技で、クセが強すぎる感じがしました。原作のタゴサクもクセ強な人物ではありますが、少し方向が異なります。飄々とのらりくらりと取り調べの刑事を煙に巻くタゴサクが本心を言い当てられて、思わず素を見せてしまう場面などもなかったですね。
原作を読み終えたのが映画を見る45分前だったこともあって、取り調べシーンに意外性は皆無でしたが、爆発シーンの迫力には感心しました。動きの少ない取調室とは対照的で、VFX班が良い仕事をしています。タゴサクを取り調べる刑事は野方署の等々力(染谷将太)から始まって、警視庁の清宮(渡部篤郎)、類家(山田裕貴)と代わります。特に山田裕貴が良かったですが、事件の背景の推理で優秀すぎる感じがしました。タゴサクの動機も原作では納得しましたが、映画は少し説得力を欠きます。
交番の警官に坂東龍汰と伊藤沙莉。この先輩後輩コンビは良かったです。原作は「このミステリーがすごい!2023年版」で1位。続編の「法廷占拠 爆弾2」は2025年版7位でした。今、読んでます。
▼観客20人ぐらい(公開初日の午後)2時間17分。
「Mr.ノーバディ2」

クライマックスではハッチの妻ベッカ(コニー・ニールセン)と父親デヴィッド(クリストファー・ロイド)も活躍します。組織の女ボス・レンディーナ役にシャロン・ストーン。監督はインドネシア出身のティモ・ジャヤント。
IMDb6.3、メタスコア59点、ロッテントマト77%。
▼観客20人ぐらい(公開7日目の午後)1時間30分。
「ミーツ・ザ・ワールド」
金原ひとみの原作を松居大悟監督が映画化。擬人化焼肉漫画「ミート・イズ・マイン」を愛する27歳の女性会社員が歌舞伎町のキャバ嬢に出会い、新たな生き方に踏み出す話。女性会社員の由嘉里を杉咲花、美しく虚無的なキャバ嬢ライを南琴奈が演じています。杉咲花の圧倒的なリアリティーに支えられた映画で、饒舌な文体の原作同様、杉咲花は早口でセリフをしゃべりまくります。由嘉里と同じか少し上の年齢の女性のように思えるライ役の南琴奈は「実際には24、5歳か」と思ったら、19歳。オーディション時には高校2年生だったそうで、10歳ぐらい上の役を演じることを考えると、松居監督、よくキャスティングしましたね。フィルモグラフィーを見ると、映画「アイスクリームフィーバー」「水は海に向かって流れる」「花まんま」のほか、ドラマ「僕達はまだその星の校則を知らない」などの出演作がありますが、今回がもっとも印象的でした。
エンドクレジットに菅田将暉の名前がありました。これは電話の声だけで登場するライの元カレ役なのでしょう。脚本は演劇ユニットを主宰する國吉咲貴。
▼観客10人ぐらい(公開6日目の午後)2時間6分。
「てっぺんの向こうにあなたがいる」

多部純子のモデルは女性で初めてエベレストに登頂した田部井淳子さん。田部井さんがエベレスト登頂に成功したのは50年前の1975年で、阪本順治監督は当時の風俗を盛り込みながら、まだまだ女性蔑視が多い中、パンに塗るジャムの量まで減らすなど節約に努めて登山の準備を進める女性たちを描いていきます。登頂には成功したものの、純子一人が世間の脚光を浴びたこともあって、グループはギクシャクして瓦解。家庭でも長男の真太郎(若葉竜也)が純子に反発を感じて家を出てしまいます。
吉永小百合の近年の主演作品にはあまり面白いものがありませんでしたが、これはそうした先入観を払拭する出来になっていると思いました。阪本監督は細かい描写がいちいちうまいです。終盤をもう少し刈り込んだ方が良かったかなとは思います。
純子の若い頃を演じるのがのん。親友で新聞記者の北山悦子(天海祐希)の若い頃を茅島みずきが演じています。脚本は「銀河鉄道の父」(2023年、成島出監督)などの坂口理子。
▼観客20人ぐらい(公開初日の午前)2時間10分。
「やがて海になる」

映画は広島県江田島市が舞台。うだつの上がらない生活を送っている修司(三浦貴大)と東京で映画監督として活躍する和也(武田航平)、呉市のスナックで働く幸恵(咲妃みゆ)の3人の関係を描いています。幸恵は高校時代、和也と付き合っていましたが、修司も密かに思いを寄せていました。今は水産会社社長と不倫関係を続けているという設定。江田島市は沖正人監督の故郷だそうですが、どうも話の内容は今一つ。脚本をもっと練って欲しかったところです。
上映後のQ&Aで質問した観客が4人いましたが、いずれも宝塚時代からのファンという女性でした。県外からわざわざ来たのでしょうかね。咲妃みゆは普段は舞台が中心とのこと。あいさつでの好感度が高かったので映画でも良い作品に出会ってほしいと思いました。
▼観客多数(公開4日目の午後)1時間30分。
「ファイナル・デッドブラッド」
一時は劇場公開が危ぶまれた映画ですが、一部の劇場で10月10日に公開後、22日から配信も始まりました。というわけでU-NEXTで見ました。傑作とは呼べないまでも、「ファイナル・デスティネーション」(2000年、ジェームズ・ウォン監督)に始まる「ファイナル」シリーズ6作の中で一番面白いという評価には頷けて、これならもっと拡大公開しても良かったのではないかと思います。冒頭、1960年代にスカイビュータワーが倒壊し、多数の犠牲者が出るシーンが迫力たっぷりで見せます。ここでプロポーズを受けるはずだったアイリス(ブレック・バッシンジャー)も事故に巻き込まれて死にますが、これはアイリスが予見した内容で、実際にはアイリスの機転で多くの人が救われました。アイリスの孫娘ステファニー(ケイトリン・サンタ・フアナ)は毎晩そのタワーが倒壊する夢を見て不審に思い、実家から離れて1人で暮らす祖母アイリス(ガブリエル・ローズ)を訪ねます。そこで分かったのはあの日、タワーにいて生き残った人たちとその家族・子孫が次々に亡くなっていること。死の運命には逆らえなかったわけです。このままではステファニーと両親、兄弟たちも死んでしまいます。
死を回避するには2つの方法があります。一つはいったん死んで復活すること、もう一つは誰かを殺してその余命を受け継ぐこと。年長者から順番に死んでいくルールもあり、これはつまり誰かがこの2つの方法のどちらかで死を回避できれば、それより若い世代は死を免れるということです。ステファニーは死の運命を変えるために奔走しますが…。
本作は14年ぶりのシリーズ作品。全体的にグシャッ、ベチョッという風な死に方が多いですが、R-18指定になるほど残酷ではありません。監督はアダム・スタインとザック・リポフスキー。
IMDb6.7、メタスコア73点、ロッテントマト92%。



















